うさむねhello.work

スーパーマリオ64のRTA(リアルタイムアタック)を専門に活動している人のブログです

メニュー

【雑記】RTAの解説準備は意外とめんどくさいことを伝える

まえがき

昨日、私がAGDQ2020の日本語ミラー配信で解説した記事をアップしたと思う。

www.usamune-hello.work

 

本日、このイベントに関するMirai氏の記事をたまたま見つけたので、読んでみた。

この記事では、『ボランティア視点として』というセクションの中で、解説者の『言葉選び』と『解説とはなんぞや』の2点が指摘されていた。

Mirai氏: 日本語ミラー配信でスタッフをやっていた方

mirais-station.hatenablog.com

 

この記事を読んだ私は「ゲームを実況する自称解説者がいるのはいつもの話だな」と感じたが、"RTA"が徐々に広まりつつある今だからこそ『RTAの"解説"とは何なのか』をしっかり語っておくことが必要なのではないか、とも感じた。

 

そこで今回は、『RTAの解説とは何か?』を話した後、『私が普段どれぐらい準備しているか』を話す。

 

RTAの解説は"状況説明"ではない!

例えば、マリオ64の『闇にとける洞窟』でマリオが壁を抜けたとしよう。(以下の動画)

 

www.youtube.com

 

この時、

「壁を抜けて地底湖に向かってますね」

という内容を口にしたならば、それは"状況説明"であり、解説者失格だ。

"解説"の意味を分かっている方ならば、例えば、

「上下エレベータに押されることで壁を抜けることができます」

とか

「今の壁の抜け方は普通のやり方よりも少し速いやり方で、意外と知らないプレイヤーが多いです」

とかを口にするだろう。

 

今の例で以下の判断線があったことが分かったと思う。

・『誰が見ても口にできること/見れば分かること』は"状況説明"

・『そのRTAに精通していないと口にできないこと』が"解説"

 

こんなことは誰もが分かってそうだが、解説初見の方もいると思うので、イベントで解説を募集する際には必ず伝えるべきだと思う。

しかし、面白いことに、大半のイベントでは説明なく"解説枠"だけがぽつんと用意されていて、「過去配信を見れば大体分かるでしょ」と言わんばかりの態度なのである。

こういう理由もあって、"状況説明"しかしない人が現れたりするわけなので、これは『解説の何たるや』を伝えていない運営にも問題があると私は思う。

 

ちなみに、"解説"をする上で最低限の"状況説明"が必要になってくるケースもよくあるので、「"状況説明"を1回でもしたらそれは解説ではない」という意味ではない。

 

解説に向けてどういう準備をしているか?

「本番でうまくしゃべれている人ほど、裏でかなり練習しているよ」

私はいつも口を酸っぱくして言っているのがこれだ。

アドリブで丁寧な"解説"("状況説明"ではない)をできる人は、本物の解説の天才か、もしくは普段から解説ばかりしている人だろう。

 

今回は、凡人の自覚がある方に向けて、私の今までの解説経験を例に、大まかな解説準備の流れを紹介する。

 

準備①: RTAが開始される前と終わりは大事なので、話すことを絶対考えておくこと

RTA中に色々説明しても良いが、セットアップ時間などのほうが視聴者がちゃんと話を聞いてくれるので、その間に必要な基礎情報を伝えよう。

最初にしっかり話せていると、「この解説者分かりやすいな」とフィルタがかかるので、RTA中にうまく話せなくても良い印象で終えられることが多い。

 

私はメモ帳に『最初伝える情報』と『最後伝える情報』だけは絶対書いていて、 AGDQ2020の時は、

・事前

- 「スーパーマリオ64ってどんなゲーム?」を一言で説明

- 「ランダマイザーって何?」を一言で説明

- 「今回のカテゴリはどんなもの?」を簡単に説明

- 「走者はどんなプレイヤー?」を簡単に説明

- 「解説する上での注意事項」を説明

・最後

- 「今回の各走者のタイムってどれぐらいだったの?」

- 「見て分かったと思うけど、ランダマイザーのRTAって〇〇で面白いんだよ!」

- 「RTA Gamersでマリオ64RTAの記事書いてます」

を準備して臨んだ。

 

準備②: RTAでポイントとなるところは絶対メモしておくこと&曖昧になっている知識は調査しておくこと

最近は解説に向けてRTA説明書を作る方が増えていて良い傾向だと思う。

ただ、長文で書かれていることが多いので、これを棒読みするのだと"解説"が追い付かないのは自明の理だ。

また、万が一"解説"が追い付いたとしても、視聴者から見ると情報が膨大過ぎて追い付いてこれないので、良くないのだ。

マリオ64を例にすると、私は1枚のスターにつき1万~2万文字以上の説明文章を簡単に作ることができるが、そんなものを解説したところで視聴者は理解ができないし、解説している間に走者は別のスターを取っているだろう。

 

よくありがちな失敗例は、少しマイナーなRTAを初めて解説する場合にある。

この場合「今後もうこのRTAを取り上げられることはないだろう」という思いもあり、そのRTAの全てを語ろうとしてしまう。

結果、解説が間に合わないか、もしくは視聴者が追い付いてこれないという現象が起こるのである。

 

ということで、本番では、(説明書があるなら)説明書の内容から厳選して話すほうが良い。

イメージとしては、ガチガチな説明書を100%とすると、5%ぐらいを話す感じだろうか。

「これぐらいは最低限教えておかないと……」というポイントだけで良く、また、広く万遍なく話すよりも、1つの事柄について詳しく話すほうが印象に残りやすいと思う。

 

私はマリオ64RTAなら寝てても解説できるので基本はアドリブでやっているが、絶対に話しておかないといけないポイントはメモしている。

 AGDQ2020の時は、

- 「最初、オープニングやジュゲムカットはないよ」

- 「ランダマイザーには状況を管理できるWebツールがあるよ」

- 「70枚取るスターはすでに決まっていて、その大半が裸(生)のスターと[!]箱の中に入っているスターなんだよ」

- ……

みたいなメモを作った。

 

また、曖昧になっている知識を調査しておくのも大事だ。

最近はイベント配信がアーカイブとして残ることが多く、正しい情報・間違えた情報問わずに永遠にそれが残ってしまうからである。

 

私は以前『0/1枚RTAトーナメント』の解説をしたことがあるが、開催直前に解説を依頼されたのにも関わらず、最低限のタイムロスポイントの目安は全部調べておいた。

- ジュゲムカットミス +8秒

- LBLJでドアから城外へ出ちゃったら +20秒程度

- DDD skipやりなおし +20秒程度

- BitS シゲルート ストップドサイと比べて+5秒

- BitS 回転リフト1サイクルで+1.5秒目安

みたいな感じで。

 

特にレースの場合は、『逆転できるかどうか』などを判断するためにタイムロスまわりの情報が必要になるが、普通にRTAをしているだけはここいらの知識は身に付かないので、別途調査しなければならない。

 

あとは走者のことを事前に調べておいたり、単純に解説するRTAで分からないポイントを事前に勉強しておいたり……、というところか。

 

準備③: 皆に注目してもらうポイントをつくること(なるべくやったほうがいい)

準備②では単純に"解説"だけの話をしたが、それだけだと味気ない解説になりやすいので、注目ポイントを事前に決めておくと良い。

先月行なわれた『RTA in Japan 2019』というRTAイベントの『マリオ64 16枚RTAレース』では、実は私が解説内容の作成を手伝っていて、

- バッタンキングのとりで 2段カゴというテクニックはかっこいいから注目!

みたいなことは事前に話しておいた覚えがある。

 

また、AGDQ2020では、 

 - 「最初、『ボム兵の戦場』or『お堀の透明スイッチ』どちらに行くかに注目!」

- 「メタルスイッチの滝がどこに紐づいているかがめちゃくちゃ重要で、注目!」

- 「BitFSで赤コインスターをやったらランダマ70枚にわかです」

みたいなことを話した覚えがあるが、これが『皆に注目してもらうポイント』だったわけだ。

 

こういうのをうまく混ぜて話すことができると、特に初見に近いような視聴者にはウケると思う。

「そうは言ってもポイントなんて思いつかないよ」という人は、自分がそのRTAを初めて見た時のことを思い出しながらピックアップすれば良いだろう。

ただ、この準備③はオプション的な立ち位置なので、『準備できるならしておいたほうが良い』ぐらいで捉えておき、基本は準備②をメインに考えたほうが良い。

 

準備④: 最低3回は声に出して練習すること

ここまで来れたらあとは練習あるのみ。

「解説内容を絞ったのに本番でうまくしゃべれなかった」みたいな話を聞くことがあるが、それは明らかな解説練習不足である。

私の経験上、なるべく本番に近い環境にして、最低限3回は声に出して練習したほうが良いと思う。

 

動画を流してアテレコする場合は使う動画を毎回変えたほうが良い。

理由は、本番では予想しない事態に陥ることもあるので、アドリブの練習もしておいたほうが良いからだ。

 

1回1回練習を終えるたびに「この話は長くなりそうだしやめておくか」「ここでグダる可能性があるからもう一つぐらい話を用意しておこう」みたいな感じで、台本を改良していくのが良いだろう。

 

ちなみに私はAGDQ2020のランダマ70枚解説に対しても、アドリブで話せるように3つの動画を並べて3回は練習した。(毎回別の動画を使用)

その他、ガチで解説する時は『毎日6時間を3日程度やって体に覚えこませて挑む』というようなことがよくある。

 

余談

ここまで読んで分かったと思うが、"解説"というのは『パワーポイントなどを用いて行なうプレゼンテーション』と大体一緒なのだ。

こう聞くと「台本を作って練習したほうが良いよね」というのが分かると思う。

私は解説は全くうまくないが、それでも本番で人並みにしゃべれているのは、今話したようなことを毎回やっているからだということを理解しておいてほしい。

 

むすび

この記事を読んだあなたは「無償のボランティアでそこまでやるのはちょっと……」と思ったかもしれないが、それはごもっともな考え方だと私は思う。

実際、イベントのスタッフが解説者に対して強く言えない理由もこれだろう。

(強く言うと「じゃあもうやりません」と言われてしまう可能性があるという意味)

 

今回のような記事を書いても、"状況説明"をする自称解説者は減らないと思う。

しかし、中には「自分の解説をより良くしたい!」という方もいると思うので、この記事がちょっとでも役立ってくれれば嬉しい限りだ。

(深夜のテンションで流し書きしたので読みにくいかもしれない) 

 

最後に一言。

解説者も走者と同じぐらい重要な役割なので、よくRTAを解説しているアジーン氏などはもっと評価されるべきだと私は思うし、そういう方の解説の作成方法を聞いてみたいとも思っている。