まえがき
私は最近いくつかのイベントを見て、「RTAイベントでのマリオ64RTAはやっぱり勝負で接戦になるのが一番盛り上がるな」と思った。
今回はこの考えに至るまでの話をするが、真面目な内容ではないので、軽い気持ちで読んでほしい。
代表的なイベント形式は?
よく行なわれることの多いイベント形式は以下2つだ。
① マラソン形式 例. GDQ、RTA in Japanなど
② 勝負形式 例. トーナメントやレース(並走)など
形式ごとに適しているゲームが違うと思うので、この後、これらの形式ごとにマリオ64RTAを当てはめてみよう。
マリオ64をマジックショーのように見せるのは難しい
私の主観だが、『① マラソン形式』のほうはマジックショーみたいな感じでRTAを見せるのに向いていると思う。
ここでいう"マジックショー"の意味は、『発生した事象に驚いてもらうことが第一』『深い解説はしない(ネタばらしはしない)』という意味だ。
なぜこれが向いているかと、多種多様のゲームタイトルを扱うRTAイベントは初めてそのRTAを見る視聴者が多く、そういった方に深い解説をしても理解されないことが多いからだ。
例えるなら、四則演算を知らない人に一次方程式を無理やり教えるみたいな感じだろう。(どんなにうまく話しても短時間での理解は難しい)
それよりも、発生した事象に驚いてもらうことが優先で、何かすごいことをしたら「今〇〇というバグ技を使って〇〇しました!」みたいな実況風解説をしたほうが盛り上がると私は思う。
この考えをもとに、マリオ64をマジックショー風にしゃべってみよう。
例えば、バッタンキングのとりででぶっこわスターを取った場合。
「ここは本来大砲を使って壁を壊す必要があるのですが、切れ目の崖捕まり判定を利用すると壊さずに取れちゃうんです! ぶっこわさないと言われています!」
例えば、あっちっち砂漠でボムピラスターを取った場合。
「ボムピラというバグ技を使うと、なんと、4つの柱を通ることなく上の入口に入ることができちゃいます!」
例えば、バッタンキングのとりでで3段かごスターを取った場合。
「3段かごというテクニックを使うと、ふーこ(鳥)を使わずにスターを取ることができるんです!」
例えば、ファイアバブルランドでサイホーンスターを取った場合。
「3段ジャンプ壁キックを使うことで、丸太を経由せずに無理やりスターを取ることができます! サイホーンと呼ばれるテクニックになります!」
前者2枚のスターは見た目が『THEバグ技』という感じなので初見の人は驚いてくれると思うが、後者2枚のスターは……、なんか地味だ。
また、マリオ64RTAはRTAの王道と呼ばれるぐらい有名なこともあり、前者2枚のスターのことを知っている方も多いだろう。驚いてくれるかは微妙なところだ。
まとめると、マリオ64RTAは、
(1) 見た目が地味なテクニックが多いので、どこに驚けばいいのか分かりにくい
(2) マリオ64RTAは知られすぎて、驚くポイントでも驚きにくい
の理由から、マジックショーのように見せるのは難しいのではないか、と思っている。
マリオ64は勝負で接戦になるとめちゃくちゃ盛り上がる!
私はマラソン形式のイベントを見る度に「マリオ64は3Dゼルダ等と比べると驚きにくいよな……」と感じていたが、ここ最近のマリオ64では、以下のような『② 勝負形式』での見せ方が多かった。
(1) 0/1枚RTA トーナメント
(2) RTA in Japan 2019 16枚RTAレース
(3) AGDQ2020 ランダマイザー70枚RTAレース
(4) ESA BREAK THE RECORD: LIVE
これらイベントでは、どれも接戦になる場面が多く、視聴者がそれを見て盛り上がっていたように感じられた。
この感覚は、スポーツ観戦に似ていると私は考えている。
例えば、サッカー観戦。
細かいルールは分からなくとも『ボールをゴールに入れるのが目的』ということさえ分かっていれば、優勢・劣勢を理解することが可能だろう。
そして、もし『10 対 0』のように一方的に片方がやられていれば盛り上がりに欠けるし、ゲーム終盤なのに『0 対 0』なら「どっちが先に得点を入れるんだ」という感じで盛り上がるはずだ。
マリオ64RTAでの勝負はこれとよく似ている。
カテゴリの細かいルールは分からなくても『とにかく速くスターを回収するのが目的』ということさえ分かっていれば、『スター枚数』や『現在いるステージ』を見ることで優勢・劣勢を理解することが可能だろう。
そして、もし『どちらもラストクッパステージにいる状況』だったら、「どっちか勝つんだ」という感じで盛り上がるはずだ。
実際、『(1) 0/1枚RTA トーナメント』では接戦展開が何度もあり盛り上がった。
・片方のプレイヤーがDDD skipを成功させてアドバンテージがあったが、もう片方のプレイヤーがミスなく追い上げてきて接戦になる
・最後の最後まで接戦で、ラストクッパの投げを成功させたかどうかで勝負が決まる
など。
また、最近行なわれた『(4) ESA BREAK THE RECORD: LIVE』はレース形式ではないものの、『相手の記録を抜けるかどうか』という熱い接戦展開が何度もあった。
・最後のクッパ投げでミスしてしまい、2位の記録を数秒差で抜けずに終わった
・前半はそこまで速くなかったものの、後半は順調に走れて5位から2位まで一気に上がった
など。
こういった最近のイベントを踏まえて、マリオ64RTAのイベント的に良いところは『スター枚数とタイマーを見るだけで進捗が分かる』というシンプルさだと思った。
そして、このシンプルさを最大限に活かせる見せ方が『勝負形式での接戦展開』であるというのが、私の持論である。
ここまで読んだあなたは「そうは言ってもRTAでそんな簡単に接戦展開なんか作れないでしょ」と思ったかもしれない。
今まで私も同じような課題を感じていたが、『ESA BREAK THE RECORD: LIVE』を観戦して、課題を破るカギがこのイベント形式にあるのではないかと気づいたのだ。
期間内自己ベスト記録勝負形式はマリオ64RTAに合っている!
『ESA BREAK THE RECORD: LIVE』は、2020年1月31日~2月2日の3日間で開催されたオフラインRTAイベントだ。
内容は、120枚RTAで上位の記録を持つ7名がスウェーデンに集まり、イベント内での自己ベスト記録で勝負するというもの。
以下の記事で話したことがあるので、気になる方はこちらを読んでほしい。
RTAイベントでのレース形式は『ルートの違いなどを見せたい』という目的もあったりするが、マリオ64RTAにおいては『熱い勝負を見せたい』という目的が主である。
熱い勝負を見せるには接戦展開が欲しいが、上位プレイヤー同士のレースであっても、一発勝負のレースで接戦展開を作るのは容易ではない。
しかし、この『期間内自己ベスト記録勝負形式』ならば、接戦展開を作りやすいのだ。
例えば、120枚RTAの自己ベスト記録が近い3名が集まったとしよう。
・Aさん 自己ベ1時間39分40秒
・Bさん 自己べ1時間40分00秒
・Cさん 自己べ1時間40分10秒
この3名で一発勝負のレース形式を行なった場合、序盤は接戦展開になるものの、大きいミスの有無で差が広がっていき、最終的に消化試合に近い状態になってしまう可能性が高い。(例えば最終的に以下のようなタイムになる)
・Aさん 1時間40分30秒
・Bさん 1時間43分00秒
・Cさん 1時間41分30秒
しかし、『3日間の自己ベスト記録で勝負する』となったらどうだろうか。
1時間40分台を出せるプレイヤーともなると、3日もあれば自己ベスト記録に近いタイムを出すことはそう難しくない。
なので、3日目には、
・Aさん 1時間40分30秒
・Bさん 1時間40分20秒
・Cさん 1時間40分15秒
みたいな面白い(タイムの近い)結果になる可能性が高いと私は思う。そして、おそらくこの結果に至るまでには様々なドラマ(接戦展開)があることだろう。
・Aさんは1時間39分台を出せるペースだったのに、最後のステージで30秒もタイムロスしてしまった
・最後の最後でCさんが自己ベストに近いタイムを出して1位になった
など。
『ESA BREAK THE RECORD: LIVE』を見た限り、『期間内自己ベスト記録勝負形式』は上記のようなドラマ(接戦展開)が起こりやすいと思われる。
特にマリオ64RTAには、乱数要素によって大幅に変わる(30秒変わる)みたいなことは無いので、実力が近いプレイヤー同士ならば絶対に面白い展開になるはずだ。
だからこそ、このイベント形式がマリオ64に合っていると私は考えている。
この形式はesportsゲーム(対戦ゲーム)ではできない"RTA"ならではの形式で、マリオ64RTAだけでなく他のゲームのRTAでも使える形式かもしれない。
しかし、この形式で盛り上げるためには『実力が近いプレイヤー同士が本気でやる』という条件が不可欠だと考えている。
実力差がありすぎると結果が見える勝負になってしまい盛り上がりに欠けるし、だからといって実力が上のプレイヤーが手を抜くのもつまらないからだ。
この点を考慮しても、自己ベスト記録の近い上位プレイヤーが多いマリオ64RTAに適したイベント形式なのかもしれない。
(期間内自己ベスト記録勝負形式じゃなくても、接戦展開を作りやすい形式ならどんな形式でも盛り上がると思う)
むすび
『ESA BREAK THE RECORD: LIVE』という珍しい形式のイベントがとても面白かったので、その感想(考察)を共有したいと思ってこの記事を書いた。
日本の人に対してはマジックショー的な見せ方のほうが好まれるかもしれない。
でも、こういった『ガチな勝負』もRTAのひとつの醍醐味だと思うし、RTAを極めた人間同士の対決は小手先でRTAを覚えた人間では見せれない『RTAの神髄(しんずい)』を見せれるので、個人的にはもっと開催してほしいと思っている。
ちなみに、今回紹介した『ESA BREAK THE RECORD: LIVE』は、最大21,000人以上のリアルタイム視聴者が集まり、めちゃくちゃ盛り上がった。
毎年夏冬に開催されるESAのチャリティーイベントは、リアルタイム視聴者数の最大が20,000~23,000人程度。
つまり、『マリオ64』というゲームタイトルだけでチャリティーイベントに匹敵する人数を集めてしまったことになる。
私は「cheese氏の世界記録ペース時の視聴者数を考えると、このイベントを見るのは多く見積もっても5,000人ぐらいかな」などと考えていたため、『マリオ64RTA』にここまで集客できる力があるなんてみじんも思っていなかった。
だからこそ、このイベント形式に魅力を感じたのかもしれない。
イベントがどんなものだったのか知りたい方は、ESAのTwitchチャンネルの過去配信一覧から見てみてほしい。
以上。