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スーパーマリオ64のRTA(リアルタイムアタック)を専門に活動している人のブログです

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イベントでマリオ64RTAを解説する時に意識しているポイント

まえがき

今回は、私がイベントでマリオ64RTAを解説する時に意識しているポイントを紹介する。

この話をするきっかけとなったのは、少し前に、「解説時の面白いトークの作り方の記事が読みたい」とごりゅや氏から言われたことにある。

意識して面白いトークをしているわけではないのだが、もし面白いと感じられているのであれば、私なりの意識しているポイントから面白くなっているのだと思った。

なので、「そのポイントを語ろう」というのが今回の内容である。

 

前提

意識しているポイントを紹介する上での前提がある。

それは『視聴者の多くが既プレイ程度のイベントで解説する』という前提だ。

言い換えると、『ガチガチにRTAしている人/見ている人が視聴者のメイン層ではない』という前提となる。

 

例えば、ガチガチにマリオ64RTAをしている人に、

「最初は、橋の端っこを通ってジュゲムのチュートリアルをスキップします。ジュゲムカットと呼ばれる技です。」

なんて解説しても、「知ってるよ」と言われるのは容易に想像がつくだろう。

このような感じで、メインの視聴者層によって、解説内容を変えなければならないのだ。

 

ということで、今回は『RTA in Japan』や『GDQの日本語ミラー配信』などを想定して、『視聴者が既プレイ程度』という前提で話を進めていくことにしよう。

 

では早速、私が意識しているポイントを紹介する。

 

意識しているポイント5つ

細かいポイントを含めると結構数があるので、優先度の高い順に5つ並べてみた。

1. テーマを決める。視聴者にどういう印象を持ってもらいたいか。
2. 全てを話そうとするな! 1区間1情報を心がける。
3. 何をしようとしているかを予告する。
4. 予告したくない場合は「〇〇!」と言えばOK。
5. 沈黙している時間を極力減らす。
 

1. テーマを決める。視聴者にどういう印象を持ってもらいたいか。

全てのポイントを無視してでも優先するべき事項は『テーマ』だ。

これは『そのRTAに対し、視聴者にどういう印象を持ってもらいたいか』という言葉に置き換えても良いだろう。

これによって解説の内容が決まるし、視聴者からの印象も決まるので、最も重要なのである。以下にマリオ64の例を2つ書く。

 

例1. RTA in Japan 2019の16枚RTAレース

テーマ: 達人
どんな印象を持ってもらう?: 「16枚RTAのトップ勢ってもはや達人じゃん!」

 

例2. AGDQ2021の目隠し16枚RTA

テーマ: パターン化
どんな印象を持ってもらう?: 「全てをパターン化してるから目隠しでクリアできるのか!」

 

なぜ、これを最優先するべきなのか――それは『イベントの視聴者の多くはその場(リアルタイム)を楽しむために視聴していること』にヒントがある。

 

例えば、夏祭りで友達と花火を見ていることを想像してほしい。

花火が打ちあがっている中、ガチの花火専門家が1つずつの花火を解説していたとして、翌日、あなたはその解説内容を覚えているだろうか。

私は、大半の人が忘れていると思う。

でも、「そういえば、あの日、花火の専門家がなんか解説しててなんかすごかったよね」というのは覚えていることだろう。RTAのイベントでも、まさにこの現象が起こっているのだ。

 

つまり、イベントで熱心に解説しても、翌日、視聴者の印象に残っているのは、「このRTAって〇〇だったよね」ぐらいのざっくりした情報だけなのである。

だからこそ、「このRTAって〇〇だったよね」の〇〇が、自分が思っていたものと違わないようにするために、テーマを決める必要があるわけだ。

ダメな例. 16枚RTAにて、世界トップ勢が走ったのに、「マリオ64ってスター16枚でクリアできるんだ!」という印象が残る。←がっかりするよね。

 

で、テーマを決めた後は、それに沿って解説を作るだけである。

例えば、『16枚RTAの達人さ』を伝えたいなら、ルートの概要よりも、細かいこだわりをメインに解説を作る、みたいな。

「このアプローチは世界でもトップの2人しか使っていないんです!」
「ここの壁キックの位置ですが、できる限り右を蹴ると、コンマ数秒なんですけど速くなるんですよね。今、そういう最適化を見せてくれました!」

 ↑こんな解説を聞いたら、意味がよく分からなくても、「そんなすごいことやってるんだ!」という印象は残るはずだ。

 

ちなみに、最近私が解説した『AGDQ2021の目隠し16枚RTA』では、各スターごとのパターン化をメインに話すことで「全てをパターン化してるから目隠しでクリアできるのか!」という印象を残せるようにしていた。

 

ぶっちゃけていうと、この『1. テーマを決める。視聴者にどういう印象を持ってもらいたいか。』が解説の全てである。

2番目以降のポイントは、これと比べると小手先のテクニック程度のものでしかないが、一応話しておこう。

 

2. 全てを話そうとするな! 1区間1情報を心がける。

初めて解説に挑む時にやりがちなのが『全てを解説しようとする行為』である。賛否両論あると思うが、私はこの行為はオススメしない。

その理由は以下2つ。

(1) 全てを解説しようとすると、ゲームの画面に対して解説が追いつかないから。

(2) 全てを解説しようとすると、情報が多すぎて、視聴者の理解が追いつかず視聴をやめてしまう恐れがあるから。

 

逆にオススメなのが『1区間1情報スタイル』だ。1区間に対し1情報であれば、ゲームの画面に対して解説が追いつくし、視聴者も理解が追いつく。

マリオ64で言うならば、1スター毎に大きいポイントを1つ解説する感じとなる。

例えば、『バッタンキングのとりで とりかごスター』なら、柵引っかけは解説せず、三段かごの部分のみ解説する、みたいな。

 

ただ、場合によっては、このスタイルでは困ることもあるだろう。例えば、1区間の中で2つのポイントを話したい場合だ。

私は、この場合は、実際に解説を練習してみて以下のどれかを選択している。

(1) 片方のポイントの解説を諦める。
(2) それぞれのポイントの解説を短縮してみる。
(3) 次のスターの解説を諦めて、そこで2つ目のポイントを話す。

 

3. 何をしようとしているかを予告する。

イベントはリアルタイムで進行されるため、一時停止して視聴するものではないので、視聴者に一発で理解してもらえる解説をするべきだ。

で、一発で理解してもらう代表的な工夫として、『何をしようとしているかを予告する。』というものがある。

 

この工夫の一例を示そう。例えば、アニメでは、話の最初に以下のようなセリフが出てくることがある。

「この時は、まさかあんなことになるなんて、思いもしていなかったのだ」

 

皆はこのセリフを見て、どう思っただろうか。

ほぼ全員が「ああ、最終的になんかやばいことが起こるんだな」と思ったはずだ。

また、まるで先に結末を見てきたかのように、やばいことが起こるつもりで視聴するはずである。

この現象は、アニメだけでなく解説にも当てはまることであり、要するに、人は予告されたほうが理解が早いのだ。

 

なので、解説では、次にやる行動(今からやろうとしている行動)を予告するスタイルをオススメする。

マリオ64であれば、「次は〇〇のスターを回収します」とか「次は〇〇というステージへ行きます」「このステージではスターを〇枚回収します」みたいな感じとなる。

 

4. 予告したくない場合は「〇〇!」と言えばOK。

『3. 何をしようとしているかを予告する。』を読んだ人の中には、

「でも、この行動はめっちゃ面白いから、あんまり予告(ネタバレ)したくないんだよな~」

と思った人もいるだろう。その時に使える魔法のセリフを紹介しよう。

それは、

「皆さん、次の動きに注目です!!!」

というセリフだ。

このセリフであれば、ネタバレは避けられるし、その上「次に何か面白いことが起こるんだな」と思わせることができるのでオススメだ。

 

5. 沈黙している時間を極力減らす。

最後のポイントは『沈黙している時間を極力減らすこと』だ。

なぜ減らしたほうが良いのか――。

それは、ゲーム実況動画&配信での離脱理由(ブラウザバックする理由)として、『沈黙している時間が長いから、退屈を感じて離脱した』という理由が良く挙がるからである。(←前どこかで見たけどうろ覚え。)

 

ただ、この内容は、『2. 全てを話そうとするな! 1区間1情報を心がける。』と若干矛盾しているように感じられる。

では、『どのようにして2.を満たしつつ5.も満たすのか』というと、

・目で見て分かるような情報や、
脳死で理解できる情報

を重要なポイント以外の時間に入れれば良いのである。

マリオ64で言うなら、「最初、木を使って上のほうへ移動していきます」みたいなハリボテのセリフだ。(アドリブとも言う。)

 

ハリボテのセリフは、台本に書くほどではない一方で、『そのRTAを詳しく理解していないとすぐに口にできない』といういやらしい性質を持っている。

私で例えるならば、マリオ64RTAならすぐに出てくるが、3DゼルダRTAマリオサンシャイン・オデッセイのRTAでは、全然出てこないみたいな。

なので、このハリボテのセリフをどれだけ口にできるかは、あなたのそのRTAの理解度にかかっているわけだ。

一応、ハリボテを話す練習方法として『解説練習に使う参考動画をコロコロ変える』という方法がある。私は解説練習時に必ずこれを実践している。

 

以上が意識しているポイント5個で、これらから解説の台本作成を手順化したのが次となる。

 

台本作成の手順

1. テーマを決める。その後、参考動画を見ながら、テーマに関する情報を全て書き出してみる。

2. 各区間ごとに、重要な点を1つずつに絞る。(話したいことがある場合は1つじゃなくてもOK)

3. 『この区間では〇〇をします』のような事前情報と、2.の情報を組み合わせて、台本を作る。

4. 参考動画を流しながら軽く解説してみる。(この段階では、余計な解説が多すぎてずっとしゃべるような感じになると思う。)

5. 解説量を減らしつつ、沈黙の時間はハリボテのセリフを口にできるように練習する。

 

ただ、本番だと走者がグダることがよくある。グダっている時間は、

1. 隙間時間で話せる雑学(カテゴリ・走者の話など)を準備しておいてそれを話す
2. 次の解説までは質問タイムにする

この2点で埋め合わせると良いと思う。

 

例. AGDQ2021の目隠し16枚RTA

1. テーマを決める

テーマ: パターン化

どんな印象を持ってもらう?: 「全てをパターン化してるから目隠しでクリアできるのか!」

 

2. 各区間ごとに、重要な点を1つずつに絞る

例: バッタンキングのとりで バッタンキングスター

重要ポイント:
・巨大ポールのすりすり音を目印にしている
・スターを直接取れるように位置を調整する

 

3. 重要ポイントと事前情報(概要)を混ぜる

例: バッタンキングのとりで バッタンキングスター

※重要ポイントは『』で、事前情報は「」で表記

 

「ここは結構面白いルートを使うので、皆さん注目です!」

「まず最初はワープを目指します。」

『で、ワープ後、巨大ポールに登るんですけど、登る時のすりすり音に注目してください!』

『今、すりすり音を目印にしてポールから離れました。』

バッタンキングと戦います。」

『で、最後。スターを直接取れるように調整します。ここで真右にジャンプして、右上にちょっと補正をかける、と』

「うまくスターを取れましたね。次はとりでのてっぺんスターを回収します」

……

 

5. 沈黙の時間はハリボテの話を入れる

例: バッタンキングのとりで バッタンキングスター

※重要ポイントは『』で、事前情報は「」、ハリボテのセリフはカッコ無し

 

「ここは結構面白いルートを使うので、皆さん注目です!」

「まず最初はワープを目指します。」

 木を登って、幅跳びで進んで、坂を滑ってワープですね。

『で、ワープ後、巨大ポールに登るんですけど、登る時のすりすり音に注目してください!』

幅跳びで巨大ポールに掴まって……、ここは音を聞いてほしいので、黙っていますね。

~ すりすり音を聞いてもらう ~

『今、すりすり音を目印にしてポールから離れました。』

バッタンキングと戦います。」

ここはバッタンキングの足音が消えたら、ジャンプしてヒップすると、うまく攻撃できますね。

『で、最後。スターを直接取れるように調整します。ここで真右にジャンプして、右上にちょっと補正をかける、と』

「うまくスターを取れましたね。次はとりでのてっぺんスターを回収します」

……

 

むすび

流し書きではあるが、解説時に意識しているポイントをまとめてみた。

2年ほど解説した経験から書いたが、マリオ64RTAの解説のみの経験である上、そもそも解説のやり方に答えがあるわけではないので、参考程度に見てほしい。

RTAの解説を極めたい!」という人はほとんどいないと思うが、そういう人のタメになったのなら、書いた甲斐があったと思う。